「欲しいものや好きな人は、必死に追いかけているときは、どんどん逃げてしまうのに、その執着を諦め、握りしめていた手を解いた途端、向こうから簡単にやってきた」という経験はありませんか?

恋愛、人間関係、ビジネス、そしてお金・・・ White Space あらゆる場面で、これは一つの法則であると言われるようになりました。

実は、数千年の歴史を持つヴェーダ占星術(インド占星術)でも、これが星の影響と仕組みによって、私たちの心を乱したり高揚させたりしながら、人生に一つの学びを与えていることが明らかにされています。

今回は、我が家で起きた小さな出来事を交えながら、なぜ「追いかけるのをやめると手に入るのか」を、ヴェーダ占星術の2つのエッセンスから解説します。

我が家で起きた「追うのをやめたら解決した」お話

先日、我が家では7歳の弟が、「お兄ちゃんが遊んでくれない」と言いながら拗ねて部屋に来ました。

普段は仲良しの二人でなんでも一緒にやっているのですが、弟は兄が自分の思い通りに動いてくれないことに怒って、同じことを言い続け、兄の方も嫌気が差していたのです。そのため、余計に意固地になって「遊ばない」となっていました。

そこで私は弟にアドバイスをしてみました。
「一回、その話やめてみたら?一人で遊べることをして楽しんでいたら、またお兄ちゃんも遊びたくなると思うよ」

弟は不満そうでしたが、一人遊びを始めることにしました。すると、少し時間が経つと、自然とお兄ちゃんはまた弟の横にいて、一緒に同じ遊びを始めていたのです。

「必死に求め、強く握りしめた手を放してみたら、求めていた状況が向こうからやってくる」そんな現象の背景には、ヴェーダ占星術が象徴する「2つの星」の働きがあります。

実体のない2つの惑星「ラーフ」と「ケートゥ」

ヴェーダ占星術では、「太陽」「月」「火星」「水星」「木星」「金星」「土星」の他に「実体のない惑星」と呼ばれる2つの星が私たちを導いています。それが「ラーフ」と「ケートゥ」です。

この2つは常にホロスコープの真反対(180度)に位置し、ペアで働いています。

  • ラーフ:「強い欲望」「飽くなき執着」「野心」「現世利益」「物質主義」「中毒」などの幻想(マーヤー)を象徴。
  • ケートゥ:「解脱」「精神性」「手放し」「無欲」「孤立」「過去世の才能」などの解放と変化を象徴。

私たちが「どうしてもこれが欲しい」「あの人を振り向かせたい」と必死で何かを追いかけているとき、心は「ラーフ」のエネルギーに支配されています。よく「恋は盲目」と言いますが、まさにこれがラーフによる「幻想」が暴走している状態です。

神話が語る「なぜ追うと逃げるのか?」の答え

ではなぜ、ラーフが見せる幻想は、私たちを追いかけさせ、どこまで行っても心を満たせないのでしょうか?
そこには、この2つの惑星の誕生にまつわるインドの古い神話に答えがありました。

「ラーフ」と「ケートゥ」は、元々一体の悪魔でした。

ある時、この悪魔は神様だけが嗜めることのできる、永遠の命を与える甘露(アムリタ)を盗み舐めてしまいます。それに気づいた神によって、悪魔は身体を半分に切り離されてしまいました。

けれども、既に不老不死の蜜を舐めていたため、頭と胴体が切り離されても悪魔は死にませんでした。こうしてバラバラになった「頭」がラーフとなり、「胴体」がケートゥとなったのです。

頭だけのラーフは、欲望が止まらない

頭しか持たないラーフは、食べても食べてもお腹に入っていかないため、常に満たされず欲望が止まりません。実体のないものを欲しがり、頭が想像をどんどん膨らませていきます。

けれども、それを掴もうとしても空の雲を捕まえるのと同じ「想像の産物」を追いかけることになります。

胴体だけのケートゥは、執着がない

逆に胴体であるケートゥは「頭(エゴ)」がないので、そもそも執着がありません。

我が家の7歳の弟が「お兄ちゃん一緒に遊ぼうよ」と怒っていた状態は、まさに頭だけの「ラーフ(強い欲望と執着)」が暴走していました。どれだけ欲しても、ラーフのエネルギーは相手をコントロールしようとするため、お兄ちゃんは嫌気が差して逃げてしまいました。

けれども、弟が「一回その話をやめて、一人で楽しむ」という選択をすると、エネルギーはま反対の「ケートゥ(手放し・無欲)」へと変わりました。

脳が作り出す「コップの濁った水」

私たち日々、たくさんの「執着」という強いエネルギーを生み出しています。あのバックが欲しい、あの人に好かれなくちゃ、これもできなくちゃ、あれもなくちゃ、これもあれも、、、と。けれども、そこで強く握りしめていた手を解き、緩めて手放してみると、とても冷静になれます。

数字、あれほど「価値がある」「必要だ」と思っていた感情は一体何だったのだろう?と「我にかえる」のです。それは、心が本来のあるがままの純粋な空間に戻ることができた状態で、これが「無欲」ケートゥのエネルギーで中和された状態です。

もし、今あなたの中に「思い通りにならない」という心配や不安が浮かび、「状況をコントロールしたい」という強い執着の念が湧いてくるのなら、それこそがラーフの見せている幻想です。焦りや怒り、恐怖などの感情というのは、まさしく頭が作り出している幻想なのです。

幻想は、コップに入った濁水のようなものです。

濁った水は、実態がよく見えないために不安になります。全身が硬直するほど張り詰めた緊張をふっと呼吸でゆるめて、頭の暴走を止めてみましょう。脳は、心配を始めるとそれが実在することを証明しようとしますが、心を「無欲」の状態に戻すことができれば、濁っていた頭の中は自然と落ち着き、明るい光が見えてリラックスします。

ラーフは「未来の扉」を開く大切な原動力

ただ、だからと言って何かを望むことは悪いこと、ということではありません。
そもそも「手放す」ことと「諦める」というのは、また別のことで、生きる上で何かを望むことは自然であり、これはとても大切なエネルギー源となります。

ラーフが与えてくれるエネルギーは、とても強力なものです。これは非常に使いこなすことが難しい力なのです。例えば、ラーフは野心や爆発的な力があり、何かを実現させたいとするときの動力エンジンとなって私たちを助けてくれます。思いを高めて強め、現実化する働きを助けてくれるのです。

ここでなぜ、強い思い(執着)が不安を生むのか、というと強迫的なほど強い観念が働くからです。その力に圧倒されると私たちは自分がコントロールできないことで、「一体どうなってしまうのか」と恐れが生まれるのです。

ただ、純粋な目的を達成するために、ラーフの力を借りることができます。
例えば、何かに取り組みたいときや、爆発的な集中力と気力を注いで完成させたい、実現させたいという思いがあるとき、ラーフは強い味方になります。

私の体験

“私は以前、体力が底をついていたときに、どうしてもある専門分野を短期間で勉強したいと思っていました。その時がちょうど、星の巡りとしてラーフの時期に当たっていました。

すると、どこからともなく集中力が湧いてきて、信じられない量の勉強をこなしていたのです。星が与えてくれる力は、私たちの心の持ち方一つで、素晴らしい変容をもたらしてくれます。”

また、ラーフには「未来」に通じており、今、「未経験だからこそ強く惹かれる」という働きがあります。もし「どうしてもこれをやってみたい!」という強い執着や欲望があるのなら、その強烈な野心を抱くのは、未来へとつながる新しい世界への扉を開こうとしている可能性があります。

それは、新しい行動の種まきであり、人生に可能性を広げる体験へと変わります。これはまるで、学校の教科の中に新しい科目を加え、自分の成長のために学ぶ量を増やすような感覚です。

このようなものは、「欲望」として制御するよりも、「星が与えてくれた種を丁寧に育てる」という意識で取り組んでいくことがおすすめです。

精神世界と物質世界の「健康なバランス」

ですから、ただ「ケートゥ」が象徴する「手放し」「無欲」ばかりが善だと思い込むことも、不調和をきたしてしまいます。

一見すると「精神性」「解脱」をもたらすケートゥを極端に「正しい」とすれば、これが現実を拒否し、人間関係や社会的な義務を放棄してしまうことにもなりかねません。そして、現実逃避を引き起こしたり、無気力になって引きこもる・・・という現実を拒絶する潔癖さに変わってしまうのです。

ラーフが与えてくれる情熱は、この物質世界を生きるためには必要な原動力となります。私たちがこの肉体を持ってこの物質世界を生きている限りは、肉体を維持し生活をする必要があるのです。仕事をする気力、誰かを愛し守ろうとする気力、ご飯を食べる気力も、理想を思い描き実現させる気力も、すべて星々が与えてくれる大切な生命の欲求です。

ただ、この野心や欲望が、行き過ぎれば、依存症になったり、他者を蹴落としてでも得たいという強い執着変わっていくことがあります。

この物質世界(ラーフ)と精神世界(ケートゥ)のバランスをどう調和させられるか。この二つはシーソーのように、常にバランスをとり続けていくものです。片方だけ良くすることはできません。これが、私たちにとって大切な課題なのです。

地に足をつけ、純粋な好奇心を大切にして生きる

欲望(ラーフ)に溺れそうになったらケートゥの視点(客観性・手放し)を意識し、逆に無気力(ケートゥ)になりそうになったら、ラーフの視点(情熱・現世の楽しみ)に心を拓く。

この健康なバランスを自分自身の中に見つけることこそが、人間らしい生き方であり、ヴェーダ占星術における最大の智慧です。

何かを望むときは、執着しすぎず「純粋な好奇心」として大切に扱いながら、地に足をつけながら、より安定した形で望みを叶えていく。そうすれば、本当の意味で心が満たされる豊かな人生を歩んでいくことができるでしょう。

星々は、私たちがいつも心地の良いバランスを保って生きられるように、今日も空から私たちをエネルギッシュに導いてくれています。

ぜひ、あなたの「星の設計図」をあなたの大切な人生に活かしてください。

 

あなたという美しい庭に、心に豊かな果実を実らせる
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